ゆかし あたらし

いろいろ書きます。穂乃果ちゃんが好きです。

成功する組織の特徴とは ー組織論から見るμ'sと音ノ木坂学院生徒会ー (4218文字)

1.はじめに

ラブライブ!1期中盤までμ'sと対になる組織として描かれてたのは絢瀬絵里率いる生徒会です。どんどん結果を出してくμ'sと比べてエリチというか生徒会は空回りしてるような印象が目立ちました。結局、エリチがμ'sに加入したためにこの対立軸という物は形骸化してしまうんですが、μ'sは廃校を止められましたが生徒会では止められない事はなんとなく想像がつきますよね。

この結果の差はなんでしょう。いろんな要素があると思いますが、今回はこれを組織の問題としてとらえて掘り下げてみようと思います。そして生徒会がμ'sのようになるには具体的にどうしたら良かったのかを考えて、僕たちが組織を動かす時の参考になればすごくいいなと思います。

 

2.成功の要素

小規模な組織が成功するか否かのは、「学習フレームができている環境」「心理的に安全な環境」「失敗を許容する環境」「多様性が認められてる環境」これらがあるかないかに寄るところが大きいと僕は考えています。心理的に安全な環境や学習フレームってなんぞやって思う人もいるかもしれませんがそれは後で解説していきます。μ'sはこれらの四つの要素があると僕は思います。反対に生徒会には情報が少ないのですべてとは言えませんが欠けてる要素が多いような気がします。ここからはそれぞれの要素についての比較と改善案を見ていきましょう。

 

3.学習フレームができている環境について

フレームというのはなんでしょう。簡単に言うと個人のとらえ方です。学習フレームというのは個人が組織を学習する場ととらえている事を言います。ちなみに経営学というか組織論の世界で学習と言うと試行錯誤という言葉に近い意味になります。

μ'sに関してはこれが出来上がってるように思います。実際に1期の作中では練習中にリーダー(穂乃果ちゃん)やマネージャー(エリチや海未ちゃん)以外の人も振り付けなどの変更について意見を出すシーンもありますし、作中で描かれない所でも積極的に行われているのでしょう。

では、生徒会はどうでしょう。これは作中における描写が少ないのでどちらと言えません。しかし一般論で言うと生徒会という組織は学習する場というより作業する場という印象が強いと思いますし、音ノ木坂学院の生徒会についても例外ではないような気がします。

では生徒会はどのように改善すればいいのでしょう。それはリーダーは自分も人間だから間違いがある事を認めて目的を達成するためには他のメンバーの力が必要であること、そのためにやって欲しい行動*1を具体的な言葉を使って述べる事です。エリチが一回はっきりそう言う事が事態を打開する鍵でしょう。

 

4.心理的に安全な環境について

心理的に安全な環境という言葉を聞いたことある人は少ないでしょう。簡単に言えばこの組織の中では自由に意見を言っても絶対に否定されないという組織というかメンバーへの信頼みたいな物です。

この点、μ'sはどうでしょう。3rdユニットシングルでは衣装と振り付けを考える会議の様子を描いたドラマパートが収録されていますが、その中で普段はあんまり意見を表に出さない花陽ちゃんが促されながらも会議の流れとは反対の意見*2を言って他のメンバーもそれを貴重な意見の一つとして受け入れます。心理的に安全な環境ができあがっていると見ていいでしょう。

しかし、生徒会は違うようです。エリチは8話でオープンキャンパスでμ'sにライブをやって貰おうって意見を出してきた人たちに威圧感を出して他の意見を出すようにいいます。これじゃ自由な意見なんてでてきませんね。その上、エリチがアルパカに唾かなんかを吹きかけられた時に後輩達(?)が必死に顔を拭いてるシーンがあります。ここから読み取れるのは厳しい上下関係です。顔ぐらい自分で吹くべきじゃないんでしょうか。厳しい上下関係は心理的安全に対してネガティブな影響をもたらします。μ'sが先輩禁止にしたのは組織論的にもすごく理にかなった事だったんですね。やっぱり、この分野だと現状では今ひとつですね。

ではどうすればいいのでしょう。

まずはリーダーが直接はなしが出来る親しみやすい人になりましょう。μ'sに入る前と後のエリチを比べたら分かりやすいと思います。そして前の章で述べたように自分が間違うことを認めて、他のメンバーに力を貸して欲しい事って事を述べましょう。そして最後に、これはμ'sでは行われていない事*3ですがやってはいけない事を明確にしましょう。そうすればその中では自由にすることに対しての恐れが減ります。またそのやってはいけない事を誰かが破った場合には公平にきちんと罰しましょう。

 

5.失敗を許容する環境について

失敗を許容する環境とはどういう事だろう。それは失敗する可能性が高い事にもチャレンジすることができる環境という事であります。*4この点に関してμ'sがそのような環境があることは誰しもが認める事でしょう。

では生徒会はどうでしょう。生徒会に関しては情報が少なくて断定ができませんが、エリチがμ'sをオープンキャンパスに参加させる事を渋った理由の一つに失敗を恐れたというのがあると思いますし、生徒会のやってる事はとても保守的に感じます。やっぱり失敗を許容する環境と言うのは難しいように感じます。

では、生徒会はどうしたらいいのでしょう。

まずはリーダーの意識改革です。怖がる癖は捨てましょう弱気な僕にさよならしましょう。これは一人の問題なので少し意識すればできると思います。今度はその意識を広めていくにはどうしたらいいのでしょう。簡単な事です。失敗にインセンティブを与えればいいのです。何か新しい事にチャレンジして残念ながら失敗した人に対してインセンティブーこの場合はチャレンジについて簡単なねぎらいや褒める言葉がいいと思いますーを与えてなんで失敗したのかをみんなで考えるような習慣を作るようにしましょう。心理的安全も大きく関わってきますね。また考える時には失敗に対する責任について追及するのは絶対にやめましょう。

 

6.多様性が認められてる環境について

多様性を認める事の大切さ、これは説明するまでもなく大事な事だと誰もが知ってはいると思います。ではなぜ重要なのでしょう。まず組織のメンバー全員が同じ信念や考え方や意見を持っている事はまれだからです。多様性を認めなかったらこのような差異がメンバー間に亀裂を生むことになります。また多様性は新たな可能性を生み出します。ではμ'sから見ていきましょう。μ'sに多様性があってそれが認められているというのは一目瞭然ですね。実際に2期6話で穂乃果ちゃんが「みんな個性的なんだもん。普通の高校生なら似たもの同士が集まると思うけど、私たちは違う。時間をかけてお互いのことを知って、お互いのことを受け入れあって、ここまで来られた。」と言います。多様性を認める事で成長してきたとはっきり言ってますね。

その一方生徒会はどうでしょう。μ'sに対するエリチの姿勢を見る限り多様性を認めているとは言えないような気がします。生徒会は今まで述べたようにピラミッド型の組織である可能性が高くリーダーであるエリチの姿勢がそのまま組織の姿勢に表れてしまいます。これについてもまだ不十分でしょう。

では解決策はどうしたらいいのでしょう。これは難しい問題です。μ'sがなぜ多様性を認める環境を手に入れられたのかは組織体質が2年生組3人の間の関係に由来しているからです。そして3人の関係は生まれ育った音ノ木坂というか秋葉原という街が多様性を認める街だったことに由来します。*5完全に特別な例なのです。でも策がないわけではありません。一つは共通の目的を持つことによって一つにまとまることです。二つは先に述べたように心理的に安全な環境を作る事です。三つ目は他の人に感心を示して積極的に質問したり情報共有する事がいいことだという雰囲気を作る事です。これはリーダーが率先して行えばいい感じでしょう。

 

7.最後に

今回は言及しませんでしたが、決断力という事は組織において非常に重要です。μ'sは穂乃果ちゃんという天才的な決断力の持ち主がいた事が成功の大きな要因でもあります。でもそういう個人の資質に頼るのはあんまりいいことではありません。だれにでも通用する決断力の付け方、それは今まで述べた事の中に答えがあると僕は思います。

μ'sと生徒会というのは、これからの組織と従来の組織のメタファーのように思えます。産業革命以来、成功する組織というのはそれぞれが自分に課されたノルマを忠実にこなす、そういう組織でした。今ではその考えは完全に過去の物になりました。それがラブライブ!にも表れています。そしてなにより、どちらの方が所属する人にとって幸せなのかはμ'sに入る前後のエリチを見れば一目瞭然です。組織の成功は組織の構造によるところが大きいと僕は思っています。一つでも多くの組織が成功する組織に笑顔を消さずに働ける組織になるように僕は祈っています。

 

8.参考図書

チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

 

 

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

 

 

 

 

 

 

*1:例えば自分が間違えてたらその場ではっきり言って欲しいとか

*2:その直前に数個出ていた出てたアイデアの方向性とは反対の意見という意味で、会議からそれた意見という意味ではありません

*3:μ'sもここで一人で抱え込まないなど何かを決めていれば12話のような悲劇的な状況は回避できていたのかもしれませんね。

*4:もう小さな失敗から学ぶ事により大きな失敗を防ぐという意味合いもあるのですがこれは今回は置いておきます。

*5:ことりちゃんSIDに女の子同士の間ではちょっと珍しいけどと言いながら書いてありますね。